2016年10月06日
NIMS、ペロブスカイト太陽電池の安定性大幅向上
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:物質・材料研究機構

物質・材料研究機構(NIMS)は6日、ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層に用いる新規添加剤を開発し、安定性を大幅に向上させることに成功したと発表した。
具体的には、暗所保存では1000時間を経ても性能の劣化が見られず、連続光照射下においても、初期効率の85%まで劣化するのに要する時間は従来の添加剤より6倍長くなり、安定性が大幅に改善された。今後、ペロブスカイト太陽電池の実用化への取り組みが加速すると期待される。

塗布プロセスで製造可能なペロブスカイト太陽電池は20%以上の変換効率が報告されてから大きな注目を集め、世界中で研究開発競争行われている。その結果、効率は向上してきたが、安定性にはまだ課題が残されている。
今回、研究グループは順セル構造のホール輸送層に用いるピリジン系の添加剤TBPに注目した。実験によりTBPとペロブスカイト材料が化学反応を起こすことが安定性を低下させる大きな要因になっていることを明らかにした。さらに赤外分光やX線回析による分析の結果、反応は主にピリジン環にある窒素原子とペロブスカイト結晶の間で生じることが分かった。

そこで、この反応を防ぐために、窒素原子の隣接位置にアルキル基を導入することとで、立体障害効果(二つの反応原子を空間的に近づくことを防ぐこと)が生じ、この化学反応の制御に成功した。

その結果、同ピリジン誘導体を用いたペロブスカイト太陽電池は、暗所で1000時間を経ても性能の低下が認められなかった。連続光照射下においても初期の変換効率から85%まで劣化する時間が、従来の添加剤の場合は25時間弱だったものが、今回は150時間まで伸ばすことができ、安定性が6倍以上改善した。
今後は、引き続き安定性に影響を及ぼす原因を究明し、新規材料の開発を行うことで、ペロブスカイト太陽電池の早期の実用化を目指す。