2019年08月28日
東北大、耐摩耗性と耐食性両立の新素材開発
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東北大学の山中謙太郎准教授(金属材料研究所)らの研究グループは28日、高硬度・高耐摩耗性で、優れた耐食性を有する鉄鋼材料の開発に成功したと発表した。従来、 金型や工具等に用いられる炭化物強化マルテンサイト鋼は、材料中の炭化物の影響により耐食性が低下しやすいという課題があった。このため「硬度・耐摩耗性」と「耐食性」を両立した新材料やその材料設計が求められてた。

山中氏らは、スーパーエンプラの製造に用いられる射出成形機の部材に応用できる鉄鋼材料の開発を目標に、炭化物強化マルテンサイト鋼の耐食性改善を研究してきた。その結果、微量の銅(Cu)を添加することにより材料の耐食性が著しく向上することを見出し高硬度と高耐食性が両立した新材料の開発に成功した。また、耐食性向上のメカニズムも明らかにした。

さらに、岩手大学などと共同で量産用の溶解炉・加工設備を用いた開発合金の試作と射出成形の実機試験を行った。その結果、スーパーエンプラの代表格であるポリフェニレンサルファイド(GF-PPS)樹脂の射出成形で、開発合金を用いたスクリューが既存のスクリュー素材に比べて2倍以上の耐久性を有することを実証した。

今後は、耐食性と耐摩耗性を兼ね備えた射出成形機部材だけでなく、化学・エネルギー分野で幅広い応用が期待される。

この研究成果は、科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)「ステージ2(シーズ育成タイプ)」の一環として得られた。英国のnpj Materials Degradation誌(80月27日付)にオンライン掲載された。