2019年09月09日
理研「酵素/阻害剤 結合初期の形成状態」解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 生命機能科学研究センターの杉田有治主任研究員らの研究チームは、分子動力学(MD)計算を用いて、酵素活性を低下させる阻害剤分子が標的タンパク質に結合する際の結合状態を特定し、結合初期に形成される複合体(会合体)が経路選択を制御していることを明らかにしたと6日発表した。

従来の結合構造に基づいて設計された薬剤分子には、標的タンパク質以外にも結合してしまうものがあり、副作用の原因になっている。今回の成果は、結合部位は似ているが機能の異なる標的タンパク質だけに結合するATP競合性阻害剤などの設計に貢献すると期待できる。新たな創薬分子設計に可能性を拓くとしている。

研究チームは今回、スーパーコンピュータ「京」と高効率アルゴリズム「二次元レプリカ交換MD法」を用いて、タンパク質リン酸化酵素の一つであるSrcキナーゼとATP競合性阻害剤間の結合・脱離イベントを100回程度サンプリングすることに成功した。

これにより、結晶構造を高い精度で再現したほか、結晶構造では見えない準安定結合状態、およびそれらに至る複数経路と中間状態を高い信頼性で予測した。そして、結合初期に形成される会合体の形と相互作用によって、異なる経路が選択されることを見いだした。

詳細は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA(PNAS)」(8月26日号)に掲載された。