2019年09月09日
慶大と東大、LIB負極材料で世界最高水準の性能達成
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:東京大学、慶応大学

リチウムイオン二次電池(LIB)の負極として金属を使わない有機材料が求められているが、慶応大学の緒明佑哉准教授(理工学部)らの研究グループは9日、東京大学大学院 五十嵐康彦助教(新領域創成科学研究科)らと共同で、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用して、世界最高水準となる高容量・高耐久性の負極用有機材料を得たと発表した。

LIBの負極となる新たな有機材料設計指針を確立した。JST戦略的創造研究推進事業の一環。

リチウム電池やナトリウム電池などの負極材料の探索は従来、ほとんど研究者の試行錯誤や経験・勘に頼って行われてきた。MIは大規模なデータ(ビッグデータ)に対して機械学習を行う。これまでの経験や勘の関与を減らすための手段ともなる。

研究では、まず16個の有機化合物について負極としての容量を実測し、容量を決定付けている少数の要因を、データの科学的手法の1つであるスパースモデリングで抽出した。この学習結果に基づき、抽出した因子を変数とした容量予測式(予測モデル)を構築した。

次に、市販の化合物の中から、研究者の経験と勘も交えながら、負極としてある程度の容量が見込まれる11個の化合物を選び、実験をする前に容量の予測値を算出した。

予測値の高かった3個の化合物について容量を実測すると、2個の化合物で高容量を示した。さらに、このうちの1つであるチオフェン化合物を重合すると、容量、耐久性、高速充放電特性が向上した高分子の負極材料を得ることができた。今回の研究で確立した有機負極材料の設計指針は、さらなる性能向上を目指す上で重要となる。

本研究成果は、2019年9月6日(ドイツ時間)に国際科学誌「Advanced Theory and Simulations」のオンライン速報版で公開された。


<ニュースリリース参照>
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2019/9/9/28-62768/