2019年09月13日
理研、触媒反応でのデータ駆動型分子設計に成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 環境資源科学研究センターの山口滋特別研究員(触媒・融合研究グループ)らの研究チームは13日、有機合成の「不斉触媒反応」で不斉収率が向上する分子設計に成功したと発表した。

医薬品などファインケミカルの合成に不可欠な不斉触媒反応には、不斉収率が向上する基質分子や触媒分子の設計が重要だが、今回の研究成果によって、触媒反応開発の効率化に向けたデータ駆動科学に関する研究の加速が期待される。

人工知能・データ科学は現在、研究者の試行錯誤によって行われる触媒反応開発を自動化・高速化すると期待されている。しかしこの場合、精度の高い予測ができるのは、解析に用いたデータの範囲内に限られる。したがって、手持ちのデータを超える機能を示す分子のデータ駆動による予測・設計は簡単とはいえない。

今回、研究チームは、不斉収率が決まる段階の反応中間体の構造を用いてデータ解析を行うと、不斉収率が向上する分子設計を可能にする構造情報を抽出・可視化できることを発見した。さらに、可視化した構造情報をもとに基質および触媒分子の設計を行い、基質に関して不斉収率が向上することを実験的に確認した。

今回の成果をもとに、今後は計算機に分子設計を行わせることも可能になると期待できる。将来的に不斉触媒反応の実験データを読み込むことで、不斉収率が向上する分子設計を自動で行う人工知能が構築できる可能性を示したということになる。


本研究は、日本化学会の科学雑誌「Bulletin of the Chemical Society of Japan」のオンライン版(9月11日)に掲載された。


<用語の解説>
■不斉触媒反応不斉反応とは : 光学活性な(キラルな)分子を作り出す反応のことで、不斉触媒反応は、触媒としてわずかな量の不斉源(不斉触媒)を用いた不斉反応のことを指す。