2019年12月13日
東北大など「有機分子でスピン移行に初成功」
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東北大学大学院の新田淳作教授(工学研究科)らは13日、東京大学、大阪市大学、分子科学研究所などの研究グループと共同で「白金から磁石としての性質を持つ分子へのスピン移行を実証した」と発表した。青や緑の顔料であるフタロシアニンは良質な分子磁性体としても知られている。

研究グループは、白金の表面にフタロシアニンを吸着させた細線が、スピンホール磁気抵抗効果を示すことを見出し、白金から分子へのスピン移行が起きていることを確かめた。

スピン移行はスピントロニクス研究における要素技術の一つであり、不揮発性メモリMRAMの主要原理として応用されている。

本成果は、これまで金属磁石でのみ確認されていたスピン移行を有機分子で実証した初めての例になる。また、スピン移行を用いたトルクにより磁石の性質を持つ分子を電流で制御できることを意味する。この技術は将来の分子を利用した集積量子演算の初期化に使える可能性がある。

本研究成果は、12月12日に「Nano Letters」誌に掲載された。


<用語の解説>
■スピン移行とは :
ある物質から他の物質へ電子の磁石としての性質であるスピンが受け渡される現象を指す。電子における電荷としての性質の流れを電流と呼び、電子におけるスピンとしての性質の流れをスピン流と呼ぶ。スピン流から磁石へのスピン移行効果を使うと電流で磁石の磁極を反転させることができる。