2020年03月10日
理研、超薄型有機太陽電池の寿命が従来の15倍に
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理化学研究所の福田憲二郎専任研究員らの研究グループは10日、高いエネルギー変換効率と長期保管安定性を両立する超薄型有機太陽電池の開発に成功した都発表した。

本研究成果は、ウェアラブルエレクトロニクスやソフトロボット用のセンサーやアクチュエータなどに安定的に電力を供給できる、軽量で柔軟な電源として応用されると期待できる。

今回、国際共同研究グループは、発電層を改良するために高エネルギー交換効率と熱安定性を併せ持つ、バルクヘテロ接合(注1)構造の素子を新たに作製した。さらに、発電層と正孔輸送層の界面における電荷輸送効率向上のため、この素子に対してポストアニール処理(注2)(150℃)を施した。

その結果、13%の高いエネルギー変換効率と、大気中保管3,000時間で劣化5%以下という長期保管安定性を両立する、超薄型有機太陽電池(厚さ3マイクロメートル)を実現した。これは過去の最高値と比較して、エネルギー変換効率は約1.2倍向上し、長期保管安定性は15倍改善したことになる。

本研究は、米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン版(3月9日付:日本時間3月10日)に掲載される。


<用語の解説>
◆(注1)バルクヘテロ接合 :電子供与性(ドナー)と電子受容性(アクセプター)の有機半導体を混合した溶液から薄膜を作成することで、それぞれの材料がランダムに混ざり合い、接合界面が薄膜全体(バルク)に広がっている構造。

◆(注2)ポストアニール処理 :電子素子を作製した後に行う加熱処理のこと。本研究では作製した有機太陽電池を、窒素雰囲気下で150℃のホットプレート上に5分間置くという処理を行った。