2020年03月10日
東大・東北大、精神疾患PAC1受容体シグナル伝達を可視化
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

 東京大学大学院の濡木理教授(理学系研究科)、東北大学大学院の井上飛鳥准教授(薬学研究科)らの研究グループは10日、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析(注)によって、構造が未知であった、ヒト由来PAC1受容体とGタンパク質との複合体構造を明らかにしたと発表した。PACAP、PAC1受容体およびGタンパク質からなるシグナル伝達複合体の立体構造を解明した。

 複合体構造からは、PAC1受容体によるPACAPの認識機構の詳細が明らかになった。構造とそれに基づいた機能解析によって、PAC1受容体の細胞外ドメインはPACAPの効率的な受容には必要な一方で、受容体の活性化には必須でないことを明らかにした。

 本研究成果は、PAC1受容体の理解を深め、その医薬品開発に貢献するとともに、クラスB GPCRにおける細胞外ドメインの役割の多様性を示したものとなる。

<用語の解説>

◆クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析 :電子顕微鏡を用いて撮影した多数の生体高分子の像からタンパク質の立体構造を再構成することで、タンパク質などの生体高分子の立体構造を決定する手法。液体窒素(-196℃)冷却下でタンパク質などの生体分子に対して電子線を照射し、試料の観察を行う。タンパク質の立体構造を高分解能で決定する手法として、検出器などにおいて目覚ましい技術革新を遂げており、2017年に、その開発に貢献した海外の研究者3名にノーベル化学賞が贈られた。


ニュースリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/03/press20200305-01-pac1.html