2020年04月27日
理研、100万気圧4000度の極限条件で地球コアの密度測定
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東京大学

東京大学の廣瀬敬教授らの研究チームは、熊本大学、理研などと大型放射光施設「SPring-8」を利用して、地球の液体金属コアの主成分である液体鉄(純鉄)の密度を、100万気圧4000度という、コアの環境とほぼ同じ超高圧高温の極限条件下で測定することに成功したと、要旨以下の通り発表した。

地球の中心には固体金属の内核があり、その外側の液体金属の外核があり、ともに超高圧高温下にある。従来から、液体鉄の密度は観測される外核のそれよりもおよそ10%大きいとされてきた。しかし、これまで高圧下で行われた液体鉄の測定は衝撃圧縮実験によるもので、誤差が大きいとされてきた。

外核の密度が液体鉄よりもかなり小さいということは、外核には鉄に加えて軽い元素(水素や酸素など)が大量に含まれていることを意味している。この軽元素の種類や量を特定することにより、地球の成り立ち、具体的には地球を作った材料物質や、コアがマントルから分離した時の状態を知ることができる。しかしそれには、純鉄との密度差を正確に理解する必要があった。

研究チームは、レーザー加熱式ダイヤモンドセルを使った、静的圧縮法による超高圧高温実験により、地球深部の解明に取り組んできた。今回、SPring-8を使って超高圧高温下における液体鉄のX線回折データを測定した。また、これまでとは全く異なるアプローチの分析手法を開発し、超高圧下における液体鉄の密度の精密決定に成功した。さらに、液体金属コアの全領域にわたる温度圧力条件での液体鉄の密度を明らかにした。

今回得られた超高圧下の液体鉄の密度は、地球の外核の密度に比べて約8%大きいことがわかった。内核の密度のことまで考えると、従来有力な不純物とされてきた酸素ではこの密度差を説明することができないため、水素など他の軽元素の存在が示唆される。これは、地球科学で第一級の問題とされてきたコアの化学組成の見積もりに向けた大きな一歩になる。