2020年05月19日
富士フィルム、AI技術で新型コロナ肺炎診断支援へ
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:富士フイルム

富士フイルムは19日、AI技術を用いた新型コロナウイルス肺炎の診断支援技術の開発に着手したと発表した。京都大学大学院の平井豊博教授(呼吸器内科)と共同開発した、間質性肺炎の病変を定量化する技術を応用し、新型コロナ肺炎患者の経過評価や治療効果の判定などをサポートする技術の開発をめざす。

まず、新型コロナウイルス肺炎の患者を受け入れている神奈川県立循環器呼吸器病センター(横浜市)との共同研究でスタートし、さらに複数の国内医療機関に拡大する。

新型コロナウイルスの感染症対策では、現在、医師が行うさまざまな治療について、その治療が有効かどうかの判断基準がまだ明確でない。新型コロナウイルス肺炎は、間質性肺炎と同様の画像所見を示し、病変パターンが多岐にわたる。肺炎の進行や治療の効果を確認するためには、胸部CT画像から、徐々に変化する病変の性状を目視で確認しなければならないが、1患者あたり数百枚にもなるCT画像の読影は専門医でも負担が大きい。

同社の間質性肺炎の定量化技術は、AI技術を用いて設計したソフトウエアが、CT画像から7種類の病変性状を識別し、間質性肺炎の病変を自動的に測定・定量化する。さらに、肺の中の病変の分布と進行状態を詳細に確認できるよう肺を12領域に分割し、領域ごとに病変の容積および割合を表示する。

同社は2018年春から京都大学と共同研究を開始した。同社の病変を分類・定量化するAI技術を、大学が有する症例データに適用し、識別性能の評価と改善のフィードバックを繰り返し実施し改良することで、高精度な識別性能を実現した。今後、新型コロナウイルス肺炎治療薬の開発・評価にも貢献できる。


<用語の解説>
◆間質性肺炎 : 肺に炎症や線維化が生じ、肺が硬くなる病気の総称。アスベストなどのじん肺のように原因が判っている間質性肺炎から、不明な特発性間質性肺炎まで多岐にわたる。特発性間質性肺炎の中でも、特発性肺線維症(IPF)が最も多く、IPFの発症率は10万人対2.23人、有病率が10万人対10.0人と推定されている。


ニュースリリース
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1589857091.pdf