2020年06月09日
京大、溶液中の蛋白質構造評価へ新規解析法開発
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京都大学の杉山正明教授(複合原子力科学研究所)らの研究グループは9日、溶液中の目的蛋白質の正確な構造を求めるために、構造評価の妨げとなる凝集の影響を実験データから除去する、新たな解析方法を開発したと発表した。

 X線や中性子を用いた小角散乱法(SAS)は溶液中の蛋白質の構造を解析する強力な測定法だが、溶液中に僅か数%程度の凝集が存在するだけで目的蛋白質の正確な散乱プロファイルが得られなくなり、誤った構造の解釈につながる危険性をはらんでいることが長年の問題だった。
 
 そこで同研究では、超遠心分析(AUC)で測定される凝集の存在比率を用いて、散乱プロファイルから凝集の影響を取り除く解析法(AUC-SAS法)を開発した。

今後はAUC-SAS法で解析した散乱プロファイルから得られる構造を元にして、従来よりも高度な生物学的議論が可能になると期待される。また、AUC-SAS法は解離会合平衡系のように複数の蛋白質成分が共存する多成分溶液に対しても応用可能で、特定成分を選択的に構造解析することができる。

生体により近い環境の複雑な多成分溶液中での蛋白質構造を解析するにあたって、AUC-SAS法は不可欠な手法となることが期待される。

 同研究成果は、2020年6月8日に、国際学術誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載された。


ニュースリリース参照
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2020/200608_1.html