2020年07月02日
九大、「匂いのハーモニー」生み出す仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

九州大学大学院の今井猛教授らと理化学研究所の共同研究グループは、匂いを嗅ぐ際に嗅神経細胞で生じる多様な調節作用(抑制性応答、拮抗作用、相乗効果)の仕組みを明らかにしたと1日発表した。

ヒトの場合、空気中の匂い分子を検出するセンサーとして約400種類(マウスは約1,000種類)の嗅神経細胞をもっている。これらを組み合わせることで、膨大な種類の匂い分子や、ほぼ無限とも言える匂いの混合物の種類を識別することができる。

従来、匂い分子は「活性化」された嗅覚受容体の組み合わせによって認識されると考えられてきた。また、匂いの混合物は、活性化パターンの「足し算」として認識されてきた。今回、この定説を検証するため、嗅神経細胞の応答を生きた動物で計測した。その結果、匂い応答には、単純な「活性化」や「足し算」以上に複雑な機構が存在することが明らかになった。

まず、匂い分子は、ある嗅覚受容体を活性化させるだけでなく、しばしば別の嗅覚受容体を抑制することが判明した。更に、複数種類の匂いを混ぜて嗅がせると、応答が個々の匂い応答の足し算になるとは限らず、拮抗作用によっては反応が抑制されたり、相乗効果によって反応が増強されたりすることも明らかになった。

これは、複数種類の匂いを混ぜたときに感じられる匂いのハーモニーの基盤になっていると考えられ、これまでの定説を覆す結果となった。同研究は今後の香料の開発に貢献すると期待される。

研究の詳細は、米国のオンライン科学雑誌「Cell Reports」(日本時間7月1日)に掲載された。


九州大学 ニュースリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/39717/20_07_01_01.pdf