2020年07月02日

北大、移植片対宿主病の新たなバイオマーカー発見

【カテゴリー】：ファインケミカル 【関連企業・団体】：北海道大学

北海道大学大学院医学研究院の豊嶋崇徳教授らの研究グループは2日、白血病などの血液悪性腫瘍の治療に用いられる同種造血幹細胞移植の合併症である腸管GVHDで大腸杯細胞の障害が生じ、大腸杯細胞によって形成される粘液層のバリア機能が破綻することをマウスモデルを使って発見したと発表した。 こうしたバリア機能の破綻は、病原性腸内細菌の生体内への侵入を招き、さらなるGVHDの悪化につながる。 さらに杯細胞の増殖因子であるインターロイキン25(IL-25)を移植前に投与して杯細胞を保護することでGVHDが軽減することも発見した。 大腸杯細胞によって形成される粘液層は，空間的に細菌叢と粘膜上皮を隔てる物理的バリアとしてだけでなく、細菌の運動性を低下させる抗菌物質であるLypd8を豊富に保持する化学的バリアとしても重要な役割を果たしていることがわかった。 これらの結果を踏まえて、さらに同種造血幹細胞移植を受けた患者の大腸杯細胞とGVHDとの関係を検討した。同種造血幹細胞移植後には、様々な腸管合併症を発症するが、大腸杯細胞はGVHDで特異的に減少しており、杯細胞数は腸管GVHDの重症度や治療反応性と相関することが判明した。 さらに、杯細胞傷害の重症度は移植後の生存率とも関連することもわかった。今後、大腸杯細胞がGVHDの診断・治療モニター・予後予測のバイオマーカーや治療標的として臨床応用されることが期待される。 同研究成果は、7月1日公開の「Science Translational Medicine」誌に掲載された。