2020年07月07日
名大、硫黄原子導入の人工mRNAで高効率たんぱく質合成
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:名古屋大学

名古屋大学 大学院の阿部洋教授(理学研究科)らの研究グループは7日、たんぱく質を高効率で合成できる人工メッセンジャーRNA(mRNA)を開発したと発表した。JST 戦略的創造研究推進事業の一環。

mRNAは生体内でたんぱく質を合成する機能を持つため、たんぱく質合成法やmRNA医薬品としての利用が望まれている。特にmRNA医薬品は、コロナウイルスのワクチン療法への適用などが期待され開発が進められている。しかし、医薬品などに応用するためには天然型mRNAではたんぱく質の生産能力が十分ではなく、高生産能力を持つmRNA分子の開発が求められていた。

生体内ではリボソームがmRNAを鋳型として3つの段階を繰り返すことでたんぱく質を合成する。
(1)開始段階 :リボソームがmRNAに結合し翻訳開始複合体を形成
(2)伸長段階:リボソームがmRNA上を移動しアミノ酸をつないでたんぱく質を合成
(3)終結段階:たんぱく質合成が終了しリボソームが解離する
という翻訳反応サイクルの中で、最も時間がかかるのは(1)の開始段階である。

今回、研究グループは、天然型mRNAのリン酸部の酸素原子を硫黄原子に置き換えた人工mRNAを合成した。そして、この人工mRNAが翻訳反応の開始段階を加速させることで、天然型mRNAと比較し、たんぱく質合成効率を20倍以上向上させることを発見した。新たなたんぱく質の大量生産技術やmRNA医薬品への利用が期待される。

同研究成果は、7月5日(英国時間)にドイツ科学誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版で公開された。