2020年07月09日
理研・京大、光合成細菌でクモ糸の生産に成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所と京都大学の共同研究チームは8日、原始的な光合成生物である海洋性の「紅色光合成細菌」を用いて、クモ糸シルクタンパク質を生産することに成功したと発表した。

今回、海洋性の紅色光合成細菌にジョロウグモの「牽引糸」タンパク質の一つである「MaSp1」をコードする遺伝子を導入し、細胞内で発現させることに成功した。

紅色光合成細菌は、二酸化炭素固定能に加えて窒素固定能を持つことが知られている。そこで人工海水の培地に炭酸水素ナトリウムと窒素ガスを加えた条件で紅色光合成細菌を培養したところ、栄養源豊富な培地で培養した場合の約7.5%に相当する量のMaSp1タンパク質を生産することできた。

さらに、紅色光合成細菌が生産したMaSp1タンパク質を精製し、タンパク質を有機溶媒に溶解し、延伸することにより、クモ糸様のファイバー構造を再現することに成功した。

海洋性の紅色光合成細菌は、地球上に豊富に存在する海水、窒素、二酸化炭素、光を生育に用いることができる微生物であることから、今後、天然資源の利用による持続可能な物質生産技術の一つとして、地球環境の保全に貢献すると期待できる。

同成果は、科学雑誌「Communications Biology」のオンライン版(日本時間7月8日)に掲載された。

<用語の解説>

◆紅色光合成細菌 :近赤外光を利用して光合成を行う細菌。水の分解による酸素発生は行わない。
◆牽引糸 :クモが獲物を獲得するときや、危機を感じて逃げるときなどに出す糸。