2020年07月10日
北大・昭和大など「腸内細菌と骨形成制御仕組み」発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

自然科学研究機構 生理学研究所(NIPS)は、昭和大学、北海道大学と共同で、生体のセロトニン産生を制御する新たな仕組みを解明したと発表した 。同研究結果は 米科学誌「 Cell 」の8月6日号に掲載予定。

ヒトの血圧は常に一定範囲に保たれるよう調節されているが、こうした恒常性の維持には血管に発現するPiezo1(ピエゾ ワン)と呼ばれる機械刺激受容体が中心的な役割を担っている。Piezo1は血管のみならず腸でも発現しているが、腸でのPiezo1の役割は不明だった。

今回、Piezo1をマウスの腸管上皮 細胞でのみ欠損させたマウスを作製したところ、このマウスでは (1) 腸の蠕動運動が低下する(2) 薬剤性腸炎に耐性を示す(3) 骨量が増加することが観察された。

この一見,無関係に思われる複数の現象を説明するメカニズムを探索した結果、「マウスの糞便中に含まれる腸内細菌由来のRNA分子が腸のPiezo1受容体を活性化しセロトニン・ホルモンの産生を誘導している」という全く新しい事実がわかった。これらの結果は、糞便中の細菌がPiezo1を介して腸と骨の恒常性を維持していることを示唆する。また腸内RNA量の制御によって便秘、腸炎、骨粗鬆症などの治療を開発できることを意味している。


<用語の解説>

◆機械刺激受容体 : 細胞に加わる機械刺激を生物学的シグナルに変換するための受容体で、臓器や組織が圧力を感知して応答するための中核分子。

◆セロトニン : 腸に90%、 脳に2%、 残りは血小板や血液中に分布するホルモン。腸上皮にあるエンテロクロマフィン細胞で作られ、腸蠕動を促進したり腸炎を増悪させる作用がある。