2020年07月13日
東北大など、植物のオートファジー仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

理化学研究所、東北大学、オックスフォード大学、アリゾナ大学の国際共同研究グループは13日、主要な細胞内分解システムの「オートファジー」と「ユビキチン・プロテアソーム系」が植物では独立に働き、生体内の新陳代謝を支えていることを発見したと発表した。

同研究は、植物が持つ高度な体内栄養リサイクルシステムの一端を解明するもので、少ない肥料で環境負荷を低減し、なお十分な収量・品質を維持できる農作物の設計に役立つと期待できる。

オートファジーとユビキチン・プロテアソームは、広範な生物が持つ細胞内成分の分解システム。ときには独立して、ときには直接情報交換することで、細胞内の老廃物分解と栄養リサイクルを担うと報告されている。

今回、研究グループは、国際的議論の一つとなっていた植物の葉における二大分解系の関係について、明確な結論を得るために、モデル植物のシロイヌナズナを用いて遺伝子欠損株や変異株を作出し、成長やストレス耐性を評価した。

その結果、二大分解系は独立に働くことで植物の栄養代謝を支えており、両者が同時に破綻すると活性酸素が過剰に蓄積し、葉が早期に枯れ、種子形成にまで異常が生じることを明らかにした。

同研究は、米国植物生理学会誌「Plant Physiology」掲載に先立ち、オンライン版(6月17日付)に掲載された。


◆オートファジー : 細胞が自分を食べる。植物、動物、酵母など、真核生物に広く保存されるタンパク質などの細胞内成分の分解システム。細胞質の一部や細胞内小器官を二重膜小胞で取り囲み、細胞内で高い分解活性を持つ酸性の小器官の液胞に運ぶことで、分解・消化する仕組み。この仕組みの解明で大隅良典博士が2016年のノーベル生理学医学賞を受賞した。

◆ユビキチン・プロテアソーム系 :真核生物に進化的に保存されるタンパク質の分解システム。ユビキチン活性化酵素E1、ユビキチン結合酵素E2、ユビキチン転移酵素E3が働くことで、標的タンパク質に小さなタンパク質タグであるユビキチンを付加する。