2020年07月16日
東工大、電子を抜くと透明な超伝導体になる物質を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京工業大学

東京工業大学の大友明教授(物質理工学院)は16日、東北大学の吉松公平講師(多元物質科学研究所)と共同で、低温で超伝導体になる層状ニオブ酸リチウム(LiNbO2)が、常温では優れたp型透明導電体になることを発見したと発表した。

三段階合成法を開発して、超伝導を示す層状ニオブ酸リチウムのエピタキシャル薄膜を合成した。基板上に保持された薄膜状の物質をヨウ素溶液に浸し、その酸化作用を利用して電子を抜きとると、高いp型伝導性と透明性が同時に発現することを見出した。

理由はニオブ原子と酸素原子がつくる特殊な電子状態にあった。ヨウ素溶液を利用した酸化反応により、この電子状態をうまく調節した結果、世界初のp型透明超伝導体実現となった。この発見は、新しい電子材料として様々な応用につながるだけでなく、二次元物質の新たな物理現象の開拓につながる。

研究成果は米国の科学誌Scienceの姉妹紙である「Science Advances」7月16日付(日本時間)に公開された。

<用語の解説>
◆p型透明導電体 : p型伝導性を示し、可視光に対して透明な物質。電気を流す導電体には電子が流れるn型とホール(電子が抜けた穴)が流れるp型の2種類があり、電子回路に広く応用するには両方が必要。多くの透明導電体は、電子を抜いてしまうと化学結合が不安定になる傾向があるためp型の種類が圧倒的に少ない。