2020年07月29日
産総研、白亜紀の海底堆積物に微生物の生存を発見
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(国研)海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球微生物学研究グループの諸野祐樹主任研究員らは28日、米国ロードアイランド大学、産総研、高知大学などと共同で、南太平洋環流域の海底下から採取した太古の地層試料(430万年前~1億150万年前)に存在する微生物を実験室培養によって蘇らせ、地層中の微生物が化石化した生命の名残ではなく、生き延びていたことを明らかにしたと発表した。

地球の表面積の7割を占める海洋の下に広がる海底には、マリンスノー(プランクトンの排泄物や死がいなど)や塵などが堆積する地層が存在する。細かい粒子で構成される海底下地層では、微生物のような小さい生き物であっても堆積物の中を動き回ることはできず、地層が形成された当時の微生物が閉じ込められていると考えられている。

今回研究では南太平洋環流域(South Pacific Gyre=SPG)から採集した堆積物(水深3,740m~5,695m)にエサとなる物質を浸み込ませた。微生物が生きていれば、与えたエサを取り込むと見た。21日~1年半の間、培養を行ったところ、1億150万年前に堆積した地層試料に最高99.1%の微生物がエサを食べ増殖していることが判明した。

白亜紀の太古に堆積してから1億年余りの間、大半の微生物が地層中で生き延びていたことが明らかになった。
また、少量の酸素を含む環境で培養を行った時に微生物が蘇ってきたが、酸素を含まない培養では顕著な微生物の増殖は認められなかった。つまり、酸素が地層の奥深くまで浸透している外洋の堆積物環境では、生育に酸素を必要とする好気性微生物のみが生物としての活性を維持したまま地質学的時間を生き延びていたことを示している。


本成果は、英科学誌「Nature Communications」に7月28日付(日本時間29日)に掲載される予定。