2020年08月21日
農研機構・世界初「根の改良で塩害に強いイネ」開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:農林水産省

 根の改良によって干ばつに強いイネを開発してきた農研機構は20日、東北大学との共同研究により、新たに土壌表面に根を伸長させる「地表根遺伝子(qSOR1遺伝子)」を発見したと発表した。この遺伝子を用いて研究チームは、根の改良による塩害に強いイネの開発に世界で初めて成功した。特定したqSOR1遺伝子は、塩害による収量の減少を約15%改善した。同遺伝子は塩害水田で起こる土壌の酸欠状態による被害の回避に有効で、塩害水田に適したイネの品種改良に利用できる。

 塩害は干ばつとともに世界の農業生産に大きな被害をもたらしてきた。例えば、2050年までに世界中で推定50%の農耕地が塩害の影響を受けるとの予測もある。

 農研機構と東北大学との共同研究チームは、今回特定したqSOR1遺伝子を導入することで、塩害による収量減少を約15%改善することに成功した。この遺伝子は塩害水田に適したイネの品種改良に利用できる。そのほかに、重粘土水田や老朽化水田、排水不良水田などで問題となっている酸欠土壌での根腐れ防止に役立つと期待できる。

同成果は、8月17日付の国際科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」オンライン版に掲載された。