2020年08月21日
北大、脂肪酸を有用物に変換する人工触媒開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学 創成研究機構の澤村正也教授らの研究グループは21日、バイオマス由来の脂肪酸を原料に様々な有用有機化合物を効率よく合成する画期的な人工触媒を開発したと発表した。

これまで、複雑な構造をもつ有機化合物を得るには、枯渇資源である石油由来の化学原料から、多くの化学反応を繰り返して合成するしか方法がなかった。研究グループは、有用な有機化合物をバイオマス原料の脂肪酸から効率よく合成することに成功した。

脂肪酸は炭化水素基と呼ばれる油になじむ長い鎖状の部分(尾部)と、その鎖の端にあって水となじむカルボキシ基と呼ばれる部分(頭部)とからなるおたまじゃくし型の有機分子で、現在、石鹸などの界面活性剤として利用されている。一方、脂肪酸の合成化学原料としての利用は、頭部カルボキシ基の化学変換に限られ、尾部の炭化水素鎖はほとんど利用されていない。これは、尾部の構成単位である炭素―水素結合が多数並び、そのうちどれか一つを選んで反応させることができなかったことによる。

触媒は炭素の鎖の中の狙った位置での化学反応を実現。化学反応の位置を正確に測るものさしを持っている。単純な分子が自然に集まってできているためコスト的にも有利となる。

石油由来の原料から光合成によって二酸化炭素から作られるバイオマスに原料転換することで、持続可能社会の実現への貢献が期待できる。

同研究成果は、8月20日公開の「Science誌」にオンライン掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/2020/08/post-715.html