2020年09月14日
理研、統合失調症のメカニズム解明に一歩
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

 理化学研究所 脳神経科学研究センターの吉川武男チームリーダー(分子精神遺伝研究)らの国際共同研究グループは14日、統合失調症患者の脳の白質(有髄神経の集積部分)に、脂質代謝に関連する遺伝子ネットワークの乱れを発見したと発表した。

 同成果は、一部の統合失調症患者で観察される白質病変の原因となるメカニズムの理解に役立つもので、新しい治療法開発の切り口になると期待できる。

 今回、研究グループは、質量分析装置を用いた統合失調症患者死後脳の脳梁(白質の束)の脂質定量解析により、一部の統合失調症患者の脳梁では、脂質組成(特定の脂質の含量パターン)が変動していることを発見した。さらに、遺伝学的解析により、NFATC2という転写因子を起点とした遺伝子ネットワークと、グリア細胞の一つであるミクログリアの異常が根底にあることを見いだした。

 これらの結果から、NFATC2を起点とした遺伝子ネットワークとミクログリアの異常が関連した脂質組成変化が、統合失調症病態の形成に関与する可能性が示された。

本研究は、科学雑誌「Cerebral CORTEX」掲載に先立ち、オンライン版(9月14付)に掲載される。