2020年09月17日
北大グループ、大腸がん発症のスイッチ発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学大学院 医学研究院の築山忠維助教らの国際共同研究グループは16日、大腸がんの発症メカニズムを解明し、その新たな治療法を提示したと発表した。

研究グループはこれまで、大腸がんで比較的多く見られる遺伝子変異に着目した研究を行い、主に腸管の幹細胞で働くRNF43という遺伝子が、がん細胞の増殖と異常細胞の排除の両方を抑制していると報告してきた。

今回、がん細胞の増殖を抑制するためにはRNF43タンパク質がリン酸化を受けて機能的なスイッチがオンになる必要があることを発見した。一方でRNF43は、がん細胞が細胞死によって排除される過程をこのリン酸化スイッチとは関係ない別のメカニズムで抑制していることも見つけた。

また大腸がんの患者は、RNF43遺伝子の変異によってリン酸化スイッチが壊れているため、がん細胞の増殖を抑制することも、増殖したがん細胞を排除することもできなくなっていることを発見した。

一般的に発がんには最低でも3段階の遺伝子変異が必要と考えられているが、RNF43に変異を持つ場合は、たった2つの遺伝子変異だけで大腸がんが発症することをマウスのモデル実験によって確認した。

さらにマウスに移植したがんの中で、RNF43のリン酸化スイッチを人工的にオンにすると、遺伝子変異によって失われたRNF43の機能が回復し、発がんも大きく抑制された。

これはRNF43の遺伝子変異により、大腸がん患者にRNF43のスイッチを外部から強制的に入れることが可能になれば、大腸がんの有効な治療法になり得ることを示している。

同研究成果は、2020年9月15日公開の「Nature Communications」誌にオンライン掲載された。