2020年09月18日
理研など、タンパク質分解速度で「ネズミの時間」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所、現欧州分子生物学研究所(EMBL)、スペイン・ポンペウ・ファブラ大学、京都大学などの国際共同研究グループは17日、ヒトの発生時間がマウスよりも遅いのは、遺伝子発現やタンパク質分解などの速度が、ヒトはマウスに比べて遅いことに起因することを発見したと発表した。

同研究は、「ヒトとマウスの時間の違いがどのように生じるのか」という生物学上の根本的な問いを解き明かすものとなった。

脊椎動物の発生期における重要イベントである「体節時計」は、遺伝子発現の振動現象であり、規則的な体節形成の中心原理である。

今回、国際共同研究グループは、培養皿上で多能性幹細胞から体節時計を再現し、マウスとヒトの体節時計周期の時間スケールが異なる理由を調べた。

体節時計の中心となる遺伝子をヒトとマウスで入れ替えた細胞を作製したところ、マウスの遺伝子を持ったヒト細胞はヒトの時間(5時間周期)、ヒトの遺伝子を持ったマウス細胞はマウスの時間(2時間周期)を示した。

この違いは、タンパク質の分解速度や遺伝子発現の遅れなどの生化学反応が、ヒトの細胞ではマウスよりも2倍から3倍程度遅いために生じることが分かった。つまり、ヒトとマウスの時間の違いは体節時計遺伝子の違いではなく、細胞内環境の違いによって生じることが明らかになった。

同研究成果は、科学雑誌「Science」(9月18日号)掲載に先立ち、オンライン版(日本時間9月18日)に掲載される。