2020年09月25日
東大、分析化学50年来の難問解決、微量分析法開発
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 東京大学大学院 理学系研究科の合田圭介教授らの研究グループは、極めて高い再現性、感度、均一性、生体適合性、耐久性を持つ表面増強ラマン分光法(Surface-Enhanced Raman Spectroscopy: SERS)の基板を開発し、化学(特に微量分析)における50年来の難問を解決したと発表した。

 1970年代に発見されたSERSは、金属基板上の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により、通常のラマン分光法よりも数桁以上高い感度を提供することができ、無標識の微量分析に有効として利用されてきた。
 
 だがSERSは、その高い感度をホットスポットに強く依存する上、低再現性、不均一性、低生体適合性、金属基板による光熱、酸化などの本質的な問題があり、生体分子への応用が困難だった。

 本研究では、これらの問題を克服するために、金属を一切使わない多孔質炭素ナノワイヤをアレイ状に配列したナノ構造体(PCNA)をSERS基板として開発し、これによってLSPRを使わない高感度化を可能にした。
 
 具体的には、強力な広帯域電荷移動共鳴による感度増強(約106)のみならず、上述の金属基板による問題を克服し、極めて高い均一性、生体適合性、耐久性をさまざまな分子サンプルを用いて実証した。

 本手法の高い実用性及び信頼性により、分析化学、食品科学、薬学、病理学などの多岐に渡る学術分野に加え、感染症検査、糖尿病検査、がん検診、環境安全、科学捜査などにおける微量分析への展開が期待される。
 
 例えば、血中グルコースの無標識検出による糖尿病検査、感染症(インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症など)の抗原抗体反応測定、がん代謝プロファイリング解析、細菌(大腸菌、ピロリ菌など)の表面タンパク質を検出することによるリアルタイム細菌検出、光合成生物の生体分子の分子振動計測による量子生命科学研究、などが可能となる。

同研究成果は、2020年9月24日に「Nature Communications」のオンライン版で公開される。


ニュースリリース参照
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2020/pr20200924/pr20200924.html