2020年09月25日
筑波大、細菌と糸状菌の未知の共生関係を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:科学技術振興機構

筑波大学微生物サスティナビィリティ研究センターの竹下典男准教授らの研究チームは24日、細菌の菌糸とチアミンがもたらす共生的機構について、「細菌は菌糸の高速道路を移動し“通行料”を払う」とするユニークな表現の発表を行った。

細菌と糸状菌はいずれも、自然界に広く存在する主要な微生物で、互いに作用して、それぞれの特徴的な機能を発揮していることが知られている。菌糸ネットワークが、細菌の増殖と移動に重要であることも分かってきた。

そこで、細菌と糸状菌のモデル生物であるBacillus subtilis(枯草菌)とAspergillus nidulansを共培養し、これらの相互作用を解析してみた。

その結果、寒天培地上で、細菌が自身の鞭毛を使って糸状菌の菌糸上を秒速30マイクロメートルという速度で素早く移動する様子が観察された。また、糸状菌の菌糸ネットワークの生長を利用して細菌がその生存空間を拡大している様子を、タイムラプス撮影により可視化した。

細菌は、菌糸を高速道路のように利用して、より速くより遠くへ移動することができる。

一方、菌糸の先端まで移動した細菌から、糸状菌にビタミンB1(チアミン)が供給され、菌糸の生長を促進していることが分かった。

細菌は菌糸の「高速道路」を移動し、糸状菌は「通行料」としてチアミンを受け取り、互いにメリットを得ている。このことは、空間的相互作用と代謝的相互作用の組み合わせにより、細菌と糸状菌が共同体として生存空間を拡大するという、これまで知られていなかった相利共生の仕組みを示している。

細菌と糸状菌の相互作用を理解することは、これら微生物が関わるバイオマス分解、動物植物への感染、植物共生と植物生育促進、発酵食品の生産などの制御につながると考えられる。

本研究の成果は、9月23日(米国東部時間)「Life Science Alliance」で公開された。


ニュースリリース参照
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20200924/pdf/20200924.pdf