2020年10月16日
海洋機構、海底熱水鉱床の初期形成に微生物 関与
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:文部科学省

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は15日、神戸大学、千葉工業大学、東北大学、九州大学などと共同で、中部沖縄トラフの海底熱水鉱床から採取された試料から、極めて低い硫黄同位体比組成を持つ黄鉄鉱(FeS2)粒子を発見し、微生物活動に由来することを明らかにしたと発表した。

これまで、海底熱水鉱床を構成する硫化鉱物の沈殿や酸化・溶解に、数多の微生物活動が関与しているとは推測されていたが、鉱床の形成プロセスと照らし合わせて特定が試みられたことはなかった。

研究グループは、地球深部探査船「ちきゅう」の航海で得られた掘削コアおよび熱水噴出孔のチムニー試料を対象として、詳細な鉱物組成測定、硫黄同位体分析を行った。

掘削コア試料に含まれる黄鉄鉱粒子は、熱水活動の重複によって鉱化作用が進むにつれて、フランボイダル、コロフォーム、自形の組織・形状を示す。

これらの黄鉄鉱粒子について、二次イオン質量分析装置を用いて局所硫黄同位体分析を行った結果、フランボイダル黄鉄鉱は最低で-38.9‰(パーミル:千分率)という、極めて低い同位体比組成を有し、フランボイダルーコロフォームー自形と組織・形状が変わるにつれて、高い硫黄同位体比組成に漸移することがわかった。

このような大きな硫黄の同位体分別を起こし得るメカニズムは、硫酸還元バクテリアによる海水の硫酸還元プロセスしか知られていない。また、低い硫黄同位体比組成を持つフランボイダル黄鉄鉱は、鉱化作用が進むにつれて海底熱水鉱床を構成する黄銅鉱(CuFeS2)、方鉛鉱(PbS)などの他の硫化鉱物によって置換される。

したがって、フランボイダル黄鉄鉱は海底熱水鉱床を構成する硫化鉱物の出発物質・核として機能しており、鉄や硫黄などの材料を供給していると考えられる。この初期出発物質であるフランボイダル黄鉄鉱は、微生物による硫酸還元プロセスを経た硫黄を材料としていることから、海底熱水鉱床の初期形成プロセスには海底下の微生物活動が重要な役割をしており、鉱床生成を誘発・促進していると考えられる。

今後、他の海域でも同様の分析を行い、海底熱水鉱床生成と微生物活動寄与の詳細を解明していく予定だ。

同成果は、米国の学術雑誌「Geology」に10月7日付けで掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20201014_01web_kaitei.pdf