2020年10月20日
東工大、どの方向にもよく伸びるセラミック材料 合成
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:東京工業大学

東京工業大学の和田智志教授(元素戦略研究センター)をはじめ、山梨大学、九州大学、広島大学などの共同研究グループは、結晶系が立方晶系に見えるにもかかわらず、優れた強誘電性と圧電性を示すセラミック材料の合成に成功し、大型放射光実験施設(SPring-8)での放射光X線回折実験により、機能発現のメカニズムを解明したと発表した。

一般に、結晶系が立方晶系に帰属する物質が強誘電性を示すことは結晶学的にあり得ない。したがって、そのような物質が優れた圧電性をもつことも期待できない。

しかし、チタン酸バリウム(BT)、マグネシウムチタン酸ビスマス(BMT)、ビスマスフェライト(BF)を固溶させてセラミック材料を合成したところ、結晶系が立方晶系に見えるにもかかわらず、優れた強誘電性を示すことを発見した。

また、よく使われている圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に迫る圧電性を示すことも発見した。

SPring-8において電場印加下でのX線回折実験を行ったところ、ビスマスイオンだけが理想的な原子位置からずれた結晶構造をしており、電場(電圧)を印加すると、電場方向にビスマスイオンが偏って結晶格子を大きくひずませることが、この一見立方晶系に見えるセラミックス材料に優れた強誘電性・圧電性が観測される仕組みであることを見出した。

結晶系が立方晶系に限りなく近いことから、セラミック粒の如何なる方向に電場印加しても結晶格子が電場方向によく伸びることも確認した。特異な構造みだれのある材料を合成すれば、たとえ立方晶に見えても、その構造みだれを電場で制御することで高性能な強誘電体・圧電体材料として機能する可能性を示した。

同研究成果は、英国のネイチャー・リサーチ・ジャーナル「Communications Materials」の10月6日付オンライン版に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.titech.ac.jp/news/2020/048122.html