2020年11月04日
産総研、光格子時計の長時間運転 世界初達成
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

産総研 物理計測標準研究部門( 計量標準総合センター)の保坂一元 副研究部門長らの研究グループは3日 横浜国立大学と共同で、「光格子時計」の長期間・高稼働率運転を世界初達成したと発表した。

光格子時計は、圧倒的に短い計測時間で高い正確さが得られる優れた時間周波数標準として、国内外の研究で実証されてきた。これらの成果を受け、メートル条約関連会議で、時間の単位「秒」を、光の周波数を用いて再定義することが検討されている。

一方、将来新しい定義に基づき国際原子時や協定世界時を運用するには、長期間高い稼働率で運転することが求められるが、光格子時計は多数のレーザーを必要とするため、長期間の高稼働率運転は困難だった。

今回、レーザーの周波数オートリロック技術を開発し、周波数安定化システムに導入することで、光格子時計の無人運転を実現し、2019年10月から2020年3月までの半年間で、稼動率80%以上の高稼働率運転を達成した。これまでに報告された1か月間程度の高稼働率運転を大きく上回る。これにより周波数標準器として世界で最も安定な運用が可能な光格子時計が実現した。

この結果、メートル条約関連会議傘下の作業部会は、この光格子時計が国際原子時に貢献することを勧告した。今後さらに継続し、国際原子時に寄与することで「秒」の再定義に向けた活動を推進する計画だ。
同技術の詳細は、11月2日付の学術誌「Metrologia」で発表された。

<用語の解説>

◆メートル条約 :1875年に17カ国の署名で成立し、現在、加盟国 62カ国、準加盟国は40カ国。日本は1885年に加盟した。国際的に計量単位を審議する組織として国際度量衡総会、国際度量衡委員会等を設立している。


▽関連ファイル:長期間運転可能なイッテルビウム光格子時計の開発(2018年9月21日付)

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2018/pr20180921/pr20180921.html