2020年11月16日
東大、非エルミート性由来の新たな端状態提案
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東京大学

近年、物質のトポロジーに関する研究が進み、光や音波を制御するメタマテリアルなどへも波及している。メタマテリアルではエネルギーの流入や散逸が起こり得るが、そのような非保存系(非エルミート系)のトポロジカル端状態には未解明な点が多く残されている。

東京大学大学院 工学系研究科の沙川貴大教授(物理工学)らは非エルミート性由来の新たな機構により、トポロジカル物質で見られるような端状態が保護できることを理論的に明らかにしたと発表した。

保護機構には試料内部(バルク)のトポロジーではなく、表面(エッジ)のトポロジカルな構造を利用した。従来のエルミート系とは大きく性質が異なり、非エルミート系に特有のバルク・エッジ対応の破れを示唆している。また、このような端状態がレーザーの増幅に応用できることを指摘した。

本研究は、非エルミート系における端状態の基本原理の理解に資するとともに、低散逸な次世代デバイスなどの設計原理を与えると期待される。

本研究成果は、11月12日に科学雑誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。


<用語の解説>
◆非エルミート性とは
電子などミクロな世界の振る舞いは量子力学に従う。量子力学のダイナミクスを司るハミルトニアンは、転置と複素共役を同時にとっても不変であるというエルミート性を持ち、それによってエネルギーが保存して実数であることを保証している。一方、エネルギーや粒子の流出入が存在する非保存系では、ハミルトニアンが実効的にエルミート性を破ることがある。そのようなエルミート性を持たないハミルトニアンで記述される物理系を非エルミート系と呼ぶ。


ニュースリリース参照
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/shared/press/data/setnws_202011131445326686287628_123880.pdf