2020年11月26日
理研、エピゲノムの制御を受けた転写の方程式 導出
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所と東京大学、東京工業大学、千葉大学の共同研究グループは26日、細胞の機能発揮に関わる「エピゲノム」の化学修飾が、遺伝子の転写に与える影響を定量化する方程式を導出したと発表した。

同研究成果は、がん細胞などで見られるエピゲノム異常が転写のどの反応素過程に影響するかの理解につながると期待できる。

エピゲノムは、ゲノムDNA中の遺伝子をRNAに転写する度合いを制御する、ゲノムDNAの可逆的な化学修飾の仕組み。細胞核に収められたゲノムDNAはクロマチンと呼ばれる凝縮した構造をとっており、エピゲノムは転写前にその凝縮を解きほぐすなど、クロマチン構造を変換する複数の反応素過程を制御する。

エピゲノムを特徴づけるヒストンの化学修飾には複数のパターンがあるが、それらが転写のどの素過程をどの程度制御するのかはよく分かっていなかった。

今回、共同研究グループは、5SリボソームDNA(rDNA)という、短い遺伝子をクロマチンのモデルとして、生化学(作る)・生物物理学(測る)・数理解析(モデル)の異分野融合研究を行い、エピゲノムの制御を受けた転写の素過程ごとの反応速度を求める方程式を導出した。

その結果、今回の実験系では、ヒストンH4のN末端テイルが最も高度にアセチル化された状態における転写可能なクロマチンの形成速度は、全くアセチル化されていない状態と比べて2.9倍速いことを見いだした。

本研究は、科学雑誌「Nucleic Acids Research」のオンライン版(日本時間11月26日)に掲載される。


<用語の解説>
◆エピゲノムとは: 細胞内の全DNAの塩基配列として記録された遺伝情報の総体を指す「ゲノム」に対し、DNAやヒストンの化学修飾などによって細胞の個性を記憶する情報の総体を「エピゲノム」と呼ぶ。


理化学研究所ホームページ
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