2020年12月07日
理研「有機小分子が分子集合体の形成を制御」解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 創発物性科学研究センターの伊藤嘉浩チームリーダーらは4日、「両親媒性ポリペプチド」の水溶液に有機小分子を加えることで、疎水性部位が集まって安定化する疎水性相互作用の強弱を変化させ、ソフトマテリアルとしての「分子集合体」の形成を制御できることを明らかしたと発表した。

同研究成果は、抗がん剤などをはじめとした医薬品や化粧品などの薬効物質を封入し体内輸送する、ソフトマテリアルの作製技術の発展に貢献すると期待できる。

今回、研究チームは、疎水部としてαヘリックス構造を持つ両親媒性ポリペプチドのGSL12水溶液に、エタノールやアセトニトリルなどの有機小分子を添加すると、GSL12分子の集合化が促進あるいは抑制されることを明らかにした。

エタノール添加時には、水との水素結合ネットワークが発達し、αヘリックス構造側面の疎水性水和シェルが破壊されるためにGSL12分子間の疎水性相互作用が強くなり、集合化が促進された

一方、アセトニトリル添加時には、アセトニトリルがαヘリックス構造側面でナノクラスターを形成するために疎水性相互作用が弱まり、集合化が抑制された。

同研究は、科学雑誌「Journal of the American Chemical Society」掲載に先立ち、オンライン版(12月4日付)に掲載。


◆両親媒性ポリペプチド、GSL12 :
両親媒性ポリペプチドは親水性と疎水性を示す部位を併せ持つポリマー分子であり、水中において疎水性相互作用により分子集合体を形成する。本研究で用いたGSL12は、親水部に30量体のポリサルコシン、疎水部にLロイシンとアミノイソ酪酸の交互配列12量体からなる両親媒性ポリペプチド。