2020年12月17日
東大、骨を壊す「破骨細胞」の仕組みを解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

「破骨細胞」は、古い骨を吸収することで骨の新陳代謝を担う重要な細胞として知られるが、その過剰な活性化は骨粗鬆症や関節リウマチ、歯周病、がん骨転移など、様々な疾患に伴う骨破壊の原因となりやすい。

東京大学大学院 医学系研究科の高柳広教授(病因・病理学専攻)らの研究グループはこのほど、骨を壊す「破骨細胞」がつくられる仕組みを、1細胞解像度で解明したと発表した。今後、骨粗鬆症やリウマチなど骨破壊性疾患の新たな治療法開発につながると期待される。

破骨細胞の形成過程をシングルセル解析によって調べることで、一つひとつの細胞の全遺伝子発現情報を取得し、機械学習アルゴリズムにより、破骨細胞の分化経路と、それに伴う生物学的イベント及び分子プロファイルの挙動を予測した。同予測が正しいことを、複数の遺伝子改変マウスを作成することによって証明した。

これにより、破骨細胞がつくられる仕組みの詳細がこれまでにない解像度で明らかになり、破骨細胞を抑制する薬剤を開発する上で重要となる新たな分子標的が同定された。

本成果は、破骨細胞が関与する様々な疾患の原因解明に資するだけでなく、骨の破壊を防ぎ、修復を促す新しい治療法の確立につながると期待される。


<用語の解説>
◆破骨細胞とは :単球/マクロファージ系前駆細胞由来の多核巨細胞であり、生体において骨吸収を担う唯一の細胞。骨表面に強固に接着し、カテプシンK やマトリックスメタロプロテアーゼなどのタンパク分解酵素と、酸を放出することで骨基質を分解する。