2020年12月23日
北大調査、ヒト用ウイルス薬 鳥インフルに有効
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学大学院 獣医学研究院の迫田義博教授らの研究グループは23日ヒトのインフルエンザ治療薬として使われているバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)とラミビル(同:ラピアクタ)が、鳥類で非常に致死率の高い高病原性鳥インフルエンザウイルスの治療に高い効果があることを確認したと発表した。

高病原性鳥インフルエンザは、病原性の高い鳥インフル・ウイルスが鳥類に感染して起こる病気で、現在、世界中で渡り鳥の移動による同ウイルス例が多数報告されている。そこで高病原性鳥インフルエンザウイルスからこれらの貴重な鳥類を守るべく、ヒト用抗インフルエンザ薬を使い治療効果を調査した。

ニワトリに高病原性鳥インフルエンザウイルスを感染させた直後に高濃度のバロキサビル(商品名:ゾフルーザ)もしくはペラミビル(同:ラピアクタ)を12時間おきに5日間投与したところ、バロキサビルを投与したニワトリは4羽全羽、ペラミビルを投与したニワトリは4羽中3羽がウイルス感染を防御した。

投与する薬の量を変えたときの防御効果を調べたところ、感染直後に体重1kg当たり2.5mgのバロキサビルを1回投与するだけで、ウイルス感染から鳥を防御し、さらに他の鳥に感染を拡大させるウイルスの排泄も抑えられることがわかった。

この投与量はヒトへの投与量の2.5倍に相当する。さらに投与後のニワトリの血中の薬の濃度を調べたところ、投与48時間以降でもニワトリやカモの血液中では防御効果に十分な量の薬剤の残存が確認された。

高病原性鳥インフルエンザが全世界的に流行している現在、動物園等で飼育されている希少鳥類への感染は深刻な問題だ。ヒトで既に使われている抗ウイルス薬を利用することで、これらの鳥類を致死的な感染症から守ることが期待される。

なお、本研究成果は12月8日公開の「Viruses」誌に掲載された。