2021年01月12日
北大、マクロファージによるTリンパ腫 機構解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学大学院の松田 正教授(薬学研究科)らの研究グループは12日、マクロファージ免疫チェックポイント分子CD47が、低分子量GTP結合タンパク質RhoAの活性を調節するグアニンヌクレオチド交換因子と結合して、RhoA活性を促進することによりTリンパ腫の腫瘍形成や腫瘍転移に関与することを見出したと発表した。

悪性リンパ腫は,免疫を司るリンパ球ががん化して増殖し、リンパ組織に塊(腫瘤)を作る病気で年間10万人あたり10人程度の発生が報告されており、日本人の成人では最も頻度の高い血液がんの一種。

この病気は、加齢、放射線、慢性炎症などにより、染色体や遺伝子に異常が起こることが発症の原因ではないかと考えられている。日本人の悪性リンパ腫の90%以上を非ホジキンリンパ腫が占め、中でもT細胞リンパ腫には、末梢性T細胞リンパ腫・非特定型,血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性NK・T細胞リンパ腫などがあり、多剤併用化学療法や放射線療法が行われている。

しかし副作用が多く、また、再発難治例では治療が難航することもあるため、Tリンパ腫の発症や進展に関与する分子機序の解明により、副作用が少ない新しい分子標的治療薬の開発が望まれている。

今回、研究グループは、マクロファージ免疫チェックポイント分子であるCD47がTリンパ腫の増悪化に関与することを明らかにした。本研究は、CD47のTリンパ腫増悪化に対する新たな役割を発見したものであり、悪性リンパ腫の新規治療薬の開発に繋がることが期待される。

同研究成果は、2021年1月6日付のInternational Immunology誌に掲載された。