2021年02月05日
理研と慶応大「海馬による相対的な時間表現」発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:慶応大学

理化学研究所 脳神経科学研究センターの藤澤茂義チームリーダーや慶應義塾大学 文学部の伊澤栄一教授らの共同研究チームは4日、ラットを用いて、脳の海馬(大脳辺縁系の一部)の神経回路が、時間情報を相対的に表現していることを発見したと発表した。

近年、空間の認識の中心である海馬で、数秒の時間に応答して発火(神経細胞の活動)する「時間細胞」という細胞群が発見された。しかし、時間細胞がどのような時間情報に対して応答しているかは不明だった。

今回、共同研究チームは、ラットに時間計測を必要とする課題を学習させ、海馬から神経活動を記録したところ、海馬の神経細胞群は、時間計測開始から特定の秒数に応答するという絶対的な経過時間を表現しているのではなく、計測時間全体における特定の経過時間の割合、つまり相対的な経過時間に応答していることが分かった。

さらに、これらの細胞群がこれまで報告されていた空間情報に応答する海馬の細胞群と同じ神経生理学的特徴を持つことも発見した。

この結果は、海馬の細胞群が空間情報と時間情報を同じメカニズムを用いて表現していることを示唆している。
「いつ、どこで、何を」を統合したエピソード記憶の神経基盤を理解する上で重要と考えられる。

同研究は、科学雑誌「Science Advances」(日本時間2月4日付)に掲載される。


<用語の解説>
◆海馬 :脳の中で、記憶をつかさどる領域。解剖学的には大脳新皮質の内側に位置し、タツノオトシゴに似た形をしていることから「海馬」(タツノオトシゴの別名)と呼ばれる。