2021年02月22日
理研、シアノバクテリアの内部構造を可視化
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

 理化学研究所 放射光科学研究センターの小林周特別研究員らの共同研究グループは19日、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」で得られた多くのシアノバクテリア細胞の投影像から再構成した三次元構造の中に、シアノバクテリア細胞に普遍的な構造を見いだしたと発表した。

 破壊的実験であるXFELを用いたX線回折イメージングの新たな構造解析法を開拓した。

XFELを用いたX線回折イメージングは、超高強度X線パルスによって、試料粒子が原子レベルで破壊されるため、一つの試料からは一つの回折パターンしか得られない。その投影像は復元できるが、三次元構造までは復元できない。

 だが多数の粒子が類似構造を持てば、電子顕微鏡分野で開発された単粒子解析法を用いることで、X線パルスに対してさまざまに配向した粒子の投影像から、平均化された三次元構造を復元することができる。

 今回、共同研究グループは、細胞周期をそろえたシアノバクテリア細胞を多数散布凍結した試料に対して、開発した低温試料高速照射装置「高砂六号」を用いたSACLAでのX線回折イメージング実験を複数回実施し、シアノバクテリア細胞の三次元構造の可視化に成功した。

 同研究は、科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版(2月16日付)に掲載された。


<用語の解説>
◆シアノバクテリア :
酸素発生型光合成を行う原核生物で、30~25億年前に地球上に出現し、現在のように地球大気を酸素を豊富に含む環境に変えていったと考えられる。また、共生によって真核細胞に取り込まれ、植物の葉緑体の祖先となったと考えられており、進化を考える上で非常に重要な生物。


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