2021年02月22日
北大、ペプチドの立体構造を反転させる新規酵素を発見
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学大学院 工学研究院の大利 徹教授らの研究グループはこのほど、生理活性ペプチド抗生物質の生合成に関わる新奇なペプチド立体反転酵素を発見したと発表した。

微生物が生産し、抗菌活性や抗腫瘍活性などの有用生理活性を有する低分子ペプチド化合物の中にはタンパク質の翻訳合成系であるリボソームを利用して生合成されるものが存在する。これらのリボソームペプチドは、タンパク質性のアミノ酸を原料に用いて生合成されるため、通常全てのアミノ酸残基がL型の鏡像異性体で構成される。しかしストレプトミセス属放線菌が生産するペプチド抗生物質MS-271はリボソームペプチドであるにも関わらず,構成する21アミノ酸残基のうちカルボキシル末端のトリプトファンがD型となっている。

研究グループは、MS-271のD体アミノ酸残基の導入機構に注目し、今回その鍵反応となる新規のペプチド立体反転酵素(MslH)を突き止めた。

同酵素は,既存の酵素と配列類似性が全くなく、ペプチドのカルボキシル末端のアミノ酸残基をL型からD型に変換する初めての酵素。さらにこの結果に基づき、天然には存在しない新規D-アミノ酸含有ペプチド化合物の創製にも成功した。

今後、今回見出したペプチド立体反転酵素を自在に使いこなすことで,医薬品など生理活性ペプチドの創製への応用が期待できる。

なお,本研究成果は「Chemical Science」誌(2020年12月29日)にオンライン公開された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/02/post-794.html