2021年03月05日
京大、ヒト生殖細胞の運命決定機序を解明
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京都大学 高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点の斎藤通紀 教授らの研究グループは5日、精子や卵子の元となる始原生殖細胞への分化を誘導できる遺伝子を特定したと発表した。

同研究グループでは、これまでにヒトのiPS細胞を用いて、試験管内で生殖細胞発生を再現する系を作製し、どのような遺伝子が関わっているかを探索してきた。

これまでにEOMES遺伝子をはじめ、SOX17遺伝子などの発現がないと生殖細胞に分化できないことを発見し、モデル動物としてよく用いられるマウスとは異なる機序であることを明らかにしてきた。

だが、今回の研究で、これらの遺伝子の発現だけでは生殖細胞に分化しないことを突き止めた。
そこで次に、どのような遺伝子が発現していることが十分条件か、を探索した。
その結果、GATA3遺伝子、あるいは構造の類似したGATA2遺伝子をSOX17遺伝子、TFAP2C遺伝子とともに発現することで、始原生殖細胞へと分化が開始することを発見した。この発見により、生殖細胞への分化の進行を制御する因子が明らかになり、生殖細胞発生の遺伝子制御のネットワークを解明する基盤ができた。

同研究成果は、2月19日に国際学術誌「Life Science Alliance」にオンライン掲載された。


<用語の解説>

◆遺伝子ノックアウト :
遺伝子をコードするゲノムDNA配列の異常により、機能的なタンパクが生成されない状態。自然にDNAに変異が入る場合の他、本研究のように人為的にゲノム配列を編集し、作製することもできる。染色体は対で存在するため一つの遺伝子は2カ所に存在するが、その両方が改変されて初めて遺伝子のノックアウトとなる。


ニュースリリース参照
https://ashbi.kyoto-u.ac.jp/ja/news/20210219_research-result_saitou/