2021年03月09日
阪大、抗がん剤後の骨髄回復を促す機構を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:大阪大学

大阪大学 大学院医学系研究科の石井 優 教授(免疫細胞生物学)らの研究グループは、骨髄中の2型自然リンパ球が、抗がん剤治療後の骨髄傷害を感知し、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)を分泌することで血球数の回復に関わることを世界で初めて明らかにしたと発表した。

抗がん剤治療の副作用として白血球などの血球細胞は減少する。その後、骨髄内では生き残った造血前駆細胞が盛んに分裂し、血球を増やそうとするが、そのメカニズムはよく分かっていなかった。

今回、研究グループは、骨髄内に存在する免疫細胞の一種、2型自然リンパ球が、抗がん剤治療後に生き残った造血前駆細胞に増殖を働きかけていることを明らかにした。

研究グループは、抗がん剤治療後の骨髄に移植された造血前駆細胞の遺伝子発現を調べた結果、GM-CSFの刺激を受けて増殖していることを発見した。また、骨髄内のさまざまな細胞について、免疫細胞の一種である2型自然リンパ球がGM-CSFを分泌していることを突き止めた。

骨髄内の2型自然リンパ球は、抗がん剤の刺激を受けると性質を変化させてGM-CSFを分泌することが分かった。
2型自然リンパ球をマウスの骨髄から採取して培養し、体外で増やして抗がん剤投与後のマウスに移植すると、血球細胞の回復が早まる。今後、抗がん剤治療や骨髄移植後の白血球減少症治療につながると期待できる。

同研究成果は、3月6日に米国科学誌「Journal of Experimental Medicine」にオンライン掲載された。