2021年03月23日
東レ・フッ素樹脂のエネルギー予測「技術進歩賞」
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東レ

東レは23日、「分子シミュレーションを用いた、フッ素ポリマーの界面自由エネルギー予測技術の開発」で、日本化学会の「第26回(2020年度)技術進歩賞」を受賞したと発表した。同賞の受賞は3年ぶり6度目。

今回の受賞は、スーパーコンピュータを用いた大規模な分子シミュレーションにより、フッ素ポリマーの接触角と液体の界面自由エネルギーを定量的に予測することに世界で初めて成功した点が評価された。

界面自由エネルギーは、吸着・接着・毛管現象など多様な現象を支配することで知られる。そのうち吸着は分離膜の分離性能を決定する主要因で、水処理膜におけるファウリング(汚れ成分の膜表面への吸着が引き起こす目詰まり)や、気体分離膜の性能を左右するガス分子の膜への吸着など、分離の基礎科学を理解する上で重要となる。

界面自由エネルギーの評価には、ふつう接触角測定が用いられ、簡便な測定手法で表面の官能基や形状を高精度で測定できる。だがマクロな接触角と、ミクロな分子レベルでの表面構造との相関の明確化が容易でないため、分離膜設計のコンセプト実証は、試行錯誤的に進めざるを得なかった。

東レは、産総研の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」で、 先端素材高速開発技術研究組合に参画し、名古屋大学の岡崎進教授(現・東京大学)との共同研究を通じて、独自の分子シミュレーション技術を深化させ、フッ素ポリマーをモデル材料に大規模分子シミュレーションによる界面自由エネルギーの定量的予測を実現した。

同技術は、分離膜だけでなく界面接着強度の制御等にも応用可能で、汎用的な高分子表面の設計技術となり得るため、将来にわたり 高分子素材産業の発展に大きく貢献していくと期待される。


ニュースリリース
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1616474855.pdf