2021年04月01日
産総研、微生物の作用で食品加工排水から液肥生産
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

産業技術総合研究所は31日、静岡大学、静岡県工業技術研究所、アイエイアイ社(IAI:静岡県清水市、石田 徹社長)などと共同で、タンパク質を多く含む食品加工廃水を原料に、水耕栽培に使用できる有機液肥を安定・効率的に製造する技術を開発したと発表した。

微生物の作用で食品加工廃水から安定的に高品質な液体肥料(液肥)を生産する技術を開発したあ。

近年、有機肥料を用いた農業に関心が高いが、水耕栽培用の有機肥料は開発されていない。これは、植物が利用できる硝酸態の窒素栄養分を、化学的な手法以外で生産することが難しいのが要因だった。

IAIではこれまで、環境負荷低減の観点から、食品加工廃水を原料とし、微生物を用いた方法で硝酸態窒素有機液肥を生産していたが、液肥製造装置内でどのような微生物が働いているのかは未解明で、安定的な維持管理法が確立できていなかった。

産総研は静岡大学、静岡工技研、沼津工業技術センターなどと共同で、製造装置内の重要微生物の解明と運転条件の最適化に取り組んだ。

その結果、Comammox菌とよばれる、近年発見されたユニークな微生物によって効率的に硝酸態窒素が生産されていることが明らかになり、さらにこの微生物が安定的に装置内で維持されていることがわかった。

この研究は、廃棄物を原料に有価物である液肥を創り出すものであり、環境問題解決につながるものとなった。

同研究の詳細は、オランダの学術誌「Water Research」に2021年3月26日に掲載された。