2021年05月19日
東レ、放熱性に優れる炭素繊維複合材料を創出
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東レ

 東レは19日、炭素繊維複合材料「CFRP」(Carbon Fiber Reinforced Plastics)の放熱性を金属と同等まで高める高熱伝導化技術を創出したと発表した。CFRP内部の熱伝導経路を通って、熱源を効果的に放熱することができる。
 
 CFRPは軽量で高強度、高剛性などから、航空機、自動車、インフラ部材、スポーツ用品、電子機器などに広く使用されている。自動運転や電動化など、CASEに代表される次世代モビリティ用途では、充電時の発熱によるバッテリーの劣化を防ぐため、構造材料であるCFRPの放熱性向上が求められている。
 
 CFRPの熱伝導性はアルミ合金などの金属に比べ劣るため、金属よりも熱伝導性に優れたグラファイトシートを表面や内部に配置することで放熱性を改善するが、グラファイトシートは脆性材料なため、破断や飛散、損傷しやすく、品質が損なわれやすいなどが課題だった。  
 
 東レはこれまで、独自技術により、炭素繊維の短繊維で三次元的なネットワークを形成した高剛性多孔質CFRPを開発、実用化してきた。今回、この多孔質CFRPを支持体とし、グラファイトシートを保護した熱伝導層を開発した。グラファイトシートを保護することで、グラファイトシートの破断や飛散、損傷の抑制が可能となる。
 
 この熱伝導層にCFRPプリプレグを積層することで、CFRPの力学特性や品位、品質を損なうことなく、従来CFRPでは到達しえない金属以上の熱伝導性を発現させることに成功した。 今後、軽量性に加え、放熱性が求められる次世代モビリティ用途、モバイル電子機器用途、ウェアラブル端末用途へのさらなる展開が期待できる。
 
 
<用語の解説>

■ CASE :Connected Autonomous Shared Electricの略。「コネクテッド」、「自動運転」、「シェアリング」、「電動化」による、安全快適で利便性の高い次世代モビリティサービス。

■ グラファイトシート:黒鉛をシート状に加工したもの。高い熱伝導性を有し、放熱性・熱拡散性に優れる。