2021年06月04日
北大など「生物の発生パターン記述数理手法」確立
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学、公立はこだて未来大学(北海道函館市)、金沢大学らの共同研究グループは4日、数学的な理論と、生物実験の結果を融合させて、細胞の大きさと形状などの情報を保存したまま数式化する「数理モデリング」の手法を確立したと発表した。

この方法を用いることで多細胞生物の発生等の離散構造上の現象に対して理論的な解析を進めたり、新たな数理モデリングを行うことが期待できる。

多細胞生物の発生現象は、さまざまな細胞間相互作用によって制御される。近年、数理モデリングの手法を用いて細胞間相互作用と、発生パターンを理解する研究が盛んだが、このような生命現象の仕組みを調べるのに、空間方向の変数が離散量である数理モデルが提案されている。だがこのな従来方法では、細胞や格子の大きさを0に限りなく近づけて連続化する方法が取られる結果、離散構造が消えてしまいうまく機能しない問題点があった。

今回の新手法を適用すれば、生物の発生現象等の離散構造上のダイナミクスを連続モデルとして扱うことができ、連続モデルに対する解析方法や数理モデリングの方法を適用することができる。

さらに非一様な格子上のダイナミクスも数理モデル化することができる。連続化の手法や数理モデリング方法は、様々な多細胞生物の発生現象にも応用可能となる。理論的にも実験的にも新たな知見を生み出すことができる。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/210604_pr3.pdf


<用語の解説>
◆ 離散とは :自分の周りを切り取る区間を小さくしていくと自分以外含まれなくなる集合(数直線上の整数)。生命現象を数理的に解析する際には、組織中の細胞は空間的に区切られており、組織は離散的な構造をもつ細胞の集合体として扱うことが多い。

◆ Delta-Notchとは :多くの生物の発生現象で用いられている細胞間相互作用の一種。細胞膜貫通型タンパク質Deltaが隣の細胞のNotch受容体と結合することにより、隣の細胞ではNotchシグナルが活性化される。