2021年06月18日
金沢大学「流れの渦と情報処理能力」カギ解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:科学技術振興機構

 金沢大学の野津裕史 教授(数物科学)、東京大学大学院の中嶋浩平 准教授(情報理工学)らの共同研究グループは17日、新規情報処理技術である物理リザバー計算を、数値シミュレーションを用いてバーチャルに再現し、円柱周りの流れ現象における渦が情報処理能力の鍵であることを発見したと発表した。

 近年、新規情報処理技術の1つである物理リザバー計算が注目されているが、これは、リカレント・ニューラル・ネットワーク(RNN)の学習法の一種であるリザバー計算の物理実装版で、物理系を巨大なRNNと見立てて計算を実装したもので、主要な演算を物理リザバーである物理系のダイナミクスにアウトソースする。

 通常の学習で用いられる逆伝播による重みの最適化は不要で、少ない計算資源かつ瞬時に最適化可能という長所を持っている。ただし、その情報処理能力は物理リザバーの能力次第であるため物理リザバーの調査・最適化が重要となる。

 今回研究では、物理系で伝統的によく研究されている円柱周りの流れを空間2次元の数値シミュレーションによってバーチャルに実装し、流速と圧力のダイナミクスを物理リザバーとして用いた。流れの特徴を示すパラメーターであるレイノルズ数の値を変化させた結果、円柱後方に形成される双子渦が大きくなるに従って情報処理能力が高くなること、および、渦が最も大きくなり、渦が交互にできるカルマン渦へと遷移する直前のレイノルズ数において最も高い情報処理能力を持つことを明らかにした。

 今回得られた流れの渦と情報処理能力に関する知見は、将来、流れを用いた物理リザバーの情報処理能力を引き出す際に活用されることが期待される。

 同研究成果は、6月17日に英国物理学会発行の「New Journal of Physics」オンライン版に掲載される。


<用語の解説>
◆物理リ ザバー計算 :リカレント・ニューラル・ネットワークの学習法の一種であるリザバー計算の物理実装版。物理系のダイナミクスを巨大な RNN と見立て、これを用いて主要演算を行う。演算をアウトソースするため、少ない計算資源かつ瞬時に最適化可能という長所を持 つ。


ニュースリリース参照
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210617/pdf/20210617.pdf