2021年06月28日
北大、冬眠哺乳類の低温耐性とビタミンE 関わり
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 低温科学研究所の山口良文教授らの研究グループは28日、冬眠する小型哺乳類シリアンハムスターが冬眠の際の低体温に耐えるためにビタミンEを肝臓に高い濃度で保持していると発表した。

 シリアンハムスター、シマリス、ジリス、ヤマネなどの小型冬眠哺乳類は、数カ月にわたるる冬季のあいだ、体温が10℃以下に低下した深冬眠と呼ばれる低温状態で何日間も過ごす。またこの深冬眠から目覚める際には体内で熱を多量に作り出して体温を37℃付近まで急激に復温させる。

 こうした長時間の低温や急激な復温は、冬眠しない哺乳類には致命的なストレスとなる。なぜ冬眠する哺乳類が低温や急激な復温に耐えることができるのかの仕組みは未だに不明だが、これらの動物は細胞レベルでも低温耐性を示すことがいくつかの事例から知られている。

 研究グループはまず、シリアンハムスターの肝臓の細胞も低温培養下で長期生存可能な低温耐性を有することを確認した。さらにビタミンEの少ない餌で飼育したシリアンハムスターの肝細胞は、低温誘導性の細胞死を生じるが、ビタミンE投与で回復する、つまりシリアンハムスターの低温耐性は餌中に含まれるビタミンE量に依存することを発見した。

 また低温耐性の異なるシリアンハムスターとマウスの間で、餌由来のビタミンEの保持能力に差があることも見出した。
 
 同研究成果は、ヒトにおける臓器移植や再生医療の際の臓器低温保存や、低体温に伴う障害の予防法の開発にもつながると期待される。

 本研究成果は、6月25日公開の「Communications Biology」誌にオンライン掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/06/post-860.html