2021年06月29日
北大、海のハリガネムシの予想外の宿主発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院の角井敬知講師(理学研究院)らの研究グループは29日、ワラジムシやオオグソクムシ、ダイオウグソクムシなどの等脚類を宿主(寄生相手)とするハリガネムシを世界で初めて発見したと発表した。

 ハリガネムシは類線形動物門に属する動物で、幼体は内部寄生虫だが、成体は宿主外で自由生活する。
約360種の大部分は陸水生種であり、海生種は5種に限られる。これまで海のハリガネムシの宿主は、ヤドカリやエビ、カニなどが含まれる十脚類というグループに限られると考えられていた。

 研究グループは今回、日本海の水深1,425mから採集された等脚類の一種の体内からハリガネムシを発見した。
これは1870年代の海生ハリガネムシの初報告以降、等脚類に寄生する個体の世界初発見となる。
得られた個体が幼体だったため種名は特定できなかったが、形態情報を記録し、DNA配列情報を複数遺伝子について決定した。

 今回の研究成果は、十脚類以外にも海生ハリガネムシの探索に目を向けさせる重要な発見となる。また、複数遺伝子のDNA配列情報決定の条件を整えたことで、海のハリガネムシの研究にDNA配列情報活用の道を開いた。
 
 今後、より広範な動物群を対象にハリガネムシの探索を行い、発見した種の形態情報とDNA配列情報を蓄積していくことで、謎の多い海のハリガネムシの多様性と進化について理解が進むことが期待される。

なお本研究成果は、6月22日「Parasitology Research」誌にオンライン公開された