2021年07月02日
京大、意味処理/皮質脳波ネットワークを初検出
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学の池田昭夫 医学研究科特定教授らの研究グループは1日、分散表現と神経回路モデルを基盤とした脳波解析手法を開発し、物体の意味処理に関わる皮質脳波ネットワークをはじめて検出したと発表した。

 物体の意味記憶にとって脳の前側頭葉底面が特に重要であることは知られている。前側頭底面とそれに関連する脳部位がネットワークとして働くと考えられるが、それら脳部位間の機能的結合と分散表現の関連はこれまで調べられてこなかった。

 今回研究グループは、先行研究の神経回路モデルシミュレーションを基盤として、単語分散表現と脳波の機能的結合(クロススペクトルパワー)の関連を調べる新しい解析手法を開発した。この手法を用いて、絵画呼称課題における10名の皮質脳波データを解析し、物体の意味処理に関わる脳波ネットワークを調べた。

 物体の意味処理のサブプロセスについて、前側頭底面を含む3種類の皮質脳波ネットワークが関連することを明らかにした。第1に、線画提示後0.2~0.8秒の期間では、後部紡錘状回を含むハイガンマ波(90~150 Hz)ネットワークが分散表現と関連があった。これは視覚関連の意味処理に関わると考えられた。
 
 これらの結果は、先行研究の結果と合致しており、本研究で開発した解析手法の妥当性を示すものとなった。さらに意味処理のサブプロセスと、異なる周波数帯の脳波ネットワークとが関連することは新しい知見となる。またこの解析手法は、単語分散表現以外の他の分散表現にも応用できる。この応用の広がりによって、多数の脳領域が連動して働く仕組みを明らかにする手がかりが得られると期待できる。
 
 本研究成果は、5月4日に、国際学術誌「Cerebral Cortex」のオンライン版に掲載された。