2021年07月15日
ダイセルなど解明、「酢酸」が腸内細菌制御に効果
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 ダイセルは14日、理化学研究所、日本医療研究開発機構(AMED)などと、腸内細菌の主要な代謝物である酢酸の免疫制御機構に関する共同研究を行い、「酢酸」が「免疫グロブリンA(IgA)」の細菌反応性を変化させることで腸内細菌の制御に関与していることを発見したと発表した。
 
 同研究成果は科学雑誌「 Nature 」オンライン版(7月14日付)に掲載された。「Nature」本誌7月22日号で詳細が公表される。

 ヒトの腸管には40兆に及ぶ細菌が生息しており、それらは腸内細菌と呼ばれている。近年、腸内細菌が中枢神経や肥満・糖尿病などのさまざまな全身疾患に関与することが明らかとなり、腸内細菌の制御と疾患との関係に注目が集まっている。

 免疫グロブリンは、体内に異物が侵入した時に抗体として働くタンパク質で「免疫グロブリンA(IgA)」は腸内細菌を標的とする主要な免疫グロブリンの1つ。だが、IgAと腸内細菌の相互作用については不明だった。

 近年の報告から、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸等の代謝物が、腸管における免疫機能に大きな影響を与えていることが判明しつつあり、特に、ビフィズス菌等の有用菌が代謝物として産生する短鎖脂肪酸の1つである酢酸が、IgA分泌量を増加させる可能性が示唆されていた。

 しかしながら、酢酸を産み出す有用菌自体を摂取しても通過菌として排泄され、人の大腸に定着することはほとんどない上に、酢酸を経口摂取した場合、人の小腸にて消化吸収されてしまい、大腸まで届かない。
 
 ダイセルは、人の胃や小腸でほとんど消化吸収されず、大腸まで酢酸を届けられる食用素材として、新たに水溶性酢酸セルロース(WSCA:Water Soluble Cellulose Acetate)を開発した。これまでの長年にわたる酢酸セルロース関連の蓄積技術を生かした。

 研究グループは、ダイセルが開発した水溶性酢酸セルロース・WSCAを、大腸内で特異的に酢酸を増加させる飼料成分として用い、酢酸によって誘導されるIgAが、大腸菌などの病原性片利共生細菌に対して結合し、大腸表面の粘液層への侵入を阻止することを明らかにした。


ニュースリリース
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1626263623.pdf