2021年07月21日
九大、マウス幹細胞から卵巣組織再生 世界初成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学大学院の林克彦教授(医学研究院)らの研究グループは、世界で初めてマウスの多能性幹細胞から卵巣組織を再構築し、それらから機能的な卵子を作出することに成功したと発表した。

 林教授らはこれまでに、マウスの多能性幹細胞を生殖細胞のもとである始原生殖様細胞(PGCLCs)に分化させることに成功していた。しかしPGCLCsを卵子に発生させるには、胎仔卵巣の体細胞を必要とするためにヒトなどへの応用は限られていた。

 本研究では胎仔卵巣の体細胞と似た細胞(FOLSCs)をマウスのES細胞から分化誘導することに成功した。
 FOSLCsにより作られた細胞環境下では、ES細胞から分化誘導したPGCLCsは卵胞という特殊な構造に包まれて卵子にまで発生した。その発生過程は生体内の発生の様子と極めて良く似ており、得られた卵子は受精によりマウス個体に発生した。そして、これらのマウスは繁殖可能な成体にまで成長した。
 
 つまり、マウスの卵子の産生には胎仔に由来する体細胞は必要なくなり、ES細胞のみから卵子を含む機能的な卵巣組織を再構築できることを示している。

 ヒトや絶滅危惧種を含むさまざまな動物の多能性幹細胞からPGCLCs誘導が世界各国で試みられているが、いずれの種でも胎仔卵巣は取得困難であり、卵子作製のためには大きな障壁となっていた。本研究成果はその障壁を取り除く大きな成果となる。また卵巣は個体の性を決定する内分泌器官としての側面をもつ。
 
 本研究の卵巣組織の再生技術は、卵子の産生のみならず、卵巣に関わる様々な疾患の原因究明にも寄与すると思われる。同研究成果は、7月15日に「Science」オンライン掲載された。

<用語の解説>

◆FOLSCs とは :
多能性から体外培養で分化誘導した胎仔卵巣とよく似た細胞。Fetal Ovarian Somatic Cell-Lie Cellsの略。卵胞を構成するすべての細胞種が含まれる。


ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/44389/21_07_16_01.pdf